認知症の種類とその接し方

認知症とは

認知症は何かの病気によって起こる症状や状態の総称です。
老化によるもの忘れと認知症はちがいます。

誰でも加齢とともに、記憶力が低下し、人の名前が思い出せなくなったりします。

こうした「もの忘れ」は脳の老化によるものです。
しかし、認知症は「老化によるもの忘れ」とは違います。

認知症は、何かの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態をいいます。
そして認知症が進行すると、だんだんと理解力や判断力が低下し、社会生活や日常生活に支障を来すようになります。

老化によるもの忘れと認知症のちがい
老化によるもの忘れ 認知症
原因 脳の生理的な老化 脳の神経細胞の変性や脱落
もの忘れ 体験したことの一部分を忘れる
(ヒントがあれば思い出す)
体験したことを丸ごと忘れる
(ヒントがあっても思い出せない)
症状の進行 あまり進行しない だんだん進行する
判断力 低下しない 低下する
自覚 忘れっぽいことを自覚している 忘れたことの自覚がない
日常生活 支障はない 支障をきたす

認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症です。
次に多いのがレビー小体型認知症、そして血管性認知症と続きます。
これらは「三大認知症」といわれ、全体の約85%を占めています。
残りの15%の認知症の中には、下で説明している治るタイプの認知症などがあります。

アルツハイマー型認知症

もの忘れから気付くことが多く、今まで日常生活でできたことが少しずつできなくなっていきます。
新しいことが記憶できない、思い出せない、時間や場所がわからなくなるなどが特徴です。
また、物盗られ妄想や徘徊などの症状が出ることがあります。

原因

ベータたんぱくやタウたんぱくという異常なたんぱく質が脳にたまって神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮して(縮んで)しまいます。記憶を担っている海馬という部分から萎縮が始まり、だんだんと脳全体に広がります。
もうひとつの特徴としてもの忘れが始まってから、年単位で緩やかに進行していきます。

主な症状

・認知機能障害
新しく経験したことを記憶できず、すぐに忘れます。食事をしたこと自体を忘れてしまうのはそのためです。
また、日付、昼か夜か、今いる場所、家族の顔などがわからなくなることもあります。
さらに判断する力や理解する力が落ちて、食事を作る手順や味付けが難しくなる、おつりを計算することができなくなるなどが表出します。

・BPSD(行動・心理症状)
経過中に無為・無関心、妄想、徘徊、抑うつ、興奮や暴力などの症状が現れることがあります。

・身体面の症状
進行するまで目立ちません。

対応のポイント

否定しないで、本人の話をよく聞きましょう。
本人はすぐに忘れてしまうので何度も同じ質問や行動を繰り返し、ご家族や介護する方はイライラしてしまうことが多いようです。「財布を盗られた」という妄想も、本人にとっては現実。盗んでいないと反論しても通じません。

<ポイント>
・同じことを言われても、穏やかな気持ちで、初めてのつもりで話を合わせる。
・食事後に「まだ食べていない」と言われた時には「食べたでしょう」ではなく、「これから食べましょうね」というふうに接する。

レビー小体型認知症

実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が目立ちます。
また、手足が震える、小刻みに歩くなどパーキンソン症状がみられることもあります。
頭がはっきりした状態と、ボーッとした状態が、日によって変動することも特徴的です。

原因

脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質の塊がみられます。
このレビー小体が大脳に広くに現れると、その結果、認知症になります。
はっきりとした脳の萎縮はみられないことが多く、時間帯や日によって認知機能に変動があります。
しかし、次第に認知機能は低下します。

主な症状

・認知機能障害
注意力がなくなる、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。
レビー小体型認知症では、最初は記憶障害が目立たない場合もあります。

・認知機能の変動
時間帯や日によって、頭がはっきりしていて物事をよく理解したり判断したりできる状態と、ボーとして極端に理解する力や判断する力が低下している状態が入れ替わり起こります。

・BPSD(行動・心理症状)
【幻視】
実際には見えないものが本人にはありありと見える症状です。見えるものの多くは
小動物や人で「ねずみが壁を這い回っている」「知らない人が部屋に座っている」
などと、具体的です。また、人形を女の子と見間違ってしまう、丸めてある洋服を
動物と見間違うなどの「錯視」もよくみられます。

【睡眠時の異常言動】
眠っている間に大声で叫んだり、怒鳴ったり、奇声をあげたり、暴れたりすることがあります。
レム睡眠中に起こしやすいことから、レム睡眠行動障害といいます。
※レム睡眠は、身体は寝ているが脳は活動している状態なので、夢を見ていることが多くあります。

【抑うつ症状】
気分が沈み、悲しくなり、意欲が低下する症状です。抑うつ症状は、レビー小体型認知症の人の約5割にみられるともいわれます。

・身体面の症状
【パーキンソン症状】
動作が遅くなる、無表情、筋肉のこわばり、前かがみで小刻みで歩く、倒れやすいなどの症状が現れます。

【自律神経症状】
血圧や体温、内臓の働きを調整する自律神経がうまく働かず、身体的にさまざまな不調をきたします。
立ちくらみ、便秘、異常な発汗・寝汗、頻尿、だるさなどがあります。
場合によっては、めまいを起こして倒れてしまい、気を失う危険もあります。

わかりにくい「レビー小体型認知症」

レビー小体型認知症は、患者さんによって症状の現れ方が異なります。
また、時間帯や日によって症状が変動するので、正しく診断しにくい病気です。
そのため、初めにパーキンソン症状が現れて「パーキンソン病」と診断された後に、記憶障害が出てきてレビー小体型認知症とわかったり、逆にもの忘れでアルツハイマー型認知症だと思われた後にパーキンソン症状が現れてレビー小体型認知症と診断されるケースもあります。
その他にも高齢者の場合には、うつ病と診断された後、徐々にレビー小体型認知症の症状が現れることがあります。

対応のポイント

転倒に注意しましょう
パーキンソン症状で筋肉や関節がこわばり、歩行が小刻みになるため、つまずいたり、転びやすくなります。
また、立ち上がった際にふらつきや、めまいを起こして倒れたり、気を失ったりすることがあります。

<ポイント>
・イスからの立ち上がりや階段では手すりを使う。
・つまずきやすいものは片付け、家の中を整える。

食べ物が飲み込みにくくなります
症状が進行すると飲み込む(嚥下:えんげ)機能が衰えて、唾液や食べ物が気管に入ってしまうことがあります(誤嚥)。
咳払い等により自力で吐き出せるとよいのですが、吐き出せないと肺炎を起こしやすくなります。

<ポイント>
・食事の時は前かがみの姿勢をとり、見守る。
・煮込む等食材を柔らかくする、トロミをつけるなど、調理を工夫。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血などによって発症する認知症です。脳の場所や障害の程度によって、症状が異なります。そのため、できることとできないことが比較的はっきりとわかれていることが多いです。手足の麻痺などの神経症状が起きることもあります。

原因

脳の血管が詰まる「脳梗塞」や血管が破れる「脳出血」など脳血管に障害が起きると、その周りの神経細胞がダメージを受けます。脳の画像を見ると、障害の跡がわかります。
脳出血や脳梗塞の後、急激に発症し、その後も脳出血や脳梗塞に伴い症状が階段状に進行していきます。

主な症状

・認知機能障害
障害される能力と残っている能力があります(まだら認知症)。
判断力や記憶は比較的保たれています。「せん妄」が起きで突然認知機能が悪化することがあります。

・BPSD(行動・心理症状)
意欲や自発性がなくなったり落ち込んだりすることがあります。
感情の起伏が激しくなり、些細なきっかけで泣いたり興奮することがあります。

・身体面の症状
脳血管障害によって、手足に麻痺や感覚の障害など神経症状が現れることがあります。
ダメージを受けた場所によっては言語障害などが出る場合もあります。

対応のポイント

規則正しい生活習慣を

意欲がなくなって、日中の活動が少なくなると、不眠や昼夜逆転の原因になります。
今までの規則正しい生活習慣をできるだけ崩さないように、日課表などを作って無理のないものから徐々に活動を増やしていきましょう。

<ポイント>

・本人が無理しなくても楽しめることから始める。
・いろいろな誘い方を試す、誘う人を替えてみる。
・介護保険の通所介護(主にデイサービス)などを利用する。
・リハビリテーションによる今できていることの維持が大切。

三大認知症のそれぞれの特徴
アルツハイマー型認知症 レビー小体型認知症 血管性認知症
脳の変化 老人斑や神経原線維変化が、海馬を中心に脳の広範に出現する。
脳の神経細胞が死滅していく。
レビー小体という特殊なものができることで、神経細胞が死滅してしまう。 脳梗塞、脳出血などが原因で、脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死してしまう。
画像でわかる脳の変化 海馬を中心に脳の萎縮がみられる。 はっきりした脳の萎縮はみられないことが多い。 脳が壊死したところが確認できる。
男女比 女性に多い。 男性がやや多い。 男性に多い。
初期の症状 もの忘れ。 幻視、妄想、うつ状態、パーキンソン症状。 もの忘れ。
特徴的な症状 認知機能障害
(もの忘れ等)
もの盗られ妄想
徘徊
取り繕い など
認知機能障害
(注意力・視覚等)
認知の変動
幻視・妄想
うつ状態
パーキンソン症状
睡眠時の異常言動
自律神経症状 など
認知機能障害
(まだら認知症)
手足のしびれ・麻痺
感情のコントロールがうまくいかない
など
経過 記憶障害からはじまり広範な障害へ徐々に進行する。 調子の良い時と悪い時を繰り返しながら進行する。ときに急速に進行することもある。 原因となる疾患によって異なるが、比較的急に発症し、段階的に進行していくことが多い。
前頭側頭型認知症

原因ははっきりとはわからないのですが、脳のなかの前頭葉と側頭葉の神経細胞が少しずつ壊れていくことによって、いろいろな症状が出てくる認知症です。
初めに現れる症状は、他人に配慮することができないとか、周りの状況にかかわらず自分が思った通り行動してしまう、といった性格変化や行動異常であって、物忘れではありません。
そのため、単に性格が変わっただけと思われて、病気の発見が遅れがちになります。病気の始まりから終わりまで、この性格変化と行動異常はほかの症状よりも目立ちます。
ピック病と呼ばれることもあります。

この病気の方はどのくらいいるのですか?

頻度については明らかにされていません。
認知症専門外来を受診する方の7%くらいがこの病気だというデータがあります。

この病気はどのような人に多いのですか?

ほかの認知症より若年で発病することが多く、わが国の統計によると65歳未満で発症する若年性認知症のなかでは血管性認知症、アルツハイマー病に次いで、3番目に多い病気です。
ほとんどの方が70歳頃までに発病します。

この病気は遺伝するのですか?

海外では30~50%の患者さんに家族歴を認めますが、わが国では家族歴のある患者さんはほとんどいません。
したがって、わが国においては、ほとんどの患者さんは、はっきりと遺伝するものではないと考えられます。
ごく一部に遺伝子異常がわかっていて、遺伝するタイプもあります。

この病気ではどのような症状が起きますか?

ルールを守ったり、他人に配慮したりすることができなくなり、周りの状況にかかわらず、自分が思った通り行動してしまいます。
たとえば、店のものを断りなくもってきてしまう、交通ルールを無視して赤信号を通過してしまう、などです。
このほか、こだわりが強くなる、毎日決まった時間に決まったことをする、といった症状が起こります。

画像検査ではどのような所見がみられますか?

典型的な患者さんでは、頭部MRIで前頭葉や側頭葉に限局した強い萎縮を認めます。またMRIでは軽度の萎縮を認める程度も、脳血流SPECT検査で明瞭な前頭葉、側頭葉の血流低下を認める患者さんもいます。
専門医は正しい診断のために、このような異常所見を確認しています。

この病気はどのような経過をたどるのですか?

前頭側頭型認知症の経過が最近まとめられました。

【行動障害】

軽度
・愛情、親近感が低下する
中等症
・なじみのない場所では困惑する
・興奮したり落ち着きのない行動をとる
・甘いものを好むといった嗜好の変化
・協調性が乏しくなる
・日にちの見当識障害
・同じものを食べ続ける
・衝動的な行動をとる

【基本的ADL】

軽度
・以前と変わらない
中等症
・季節にあった服を選択できなくなる
重症
・食事のマナーが悪くなる
・用意されないと食事をしようとしなくなる
高度重症
・1人で留守番できなくなる
・箸、スプーン、フォークなどを食事時にうまく使えなくなる。
・尿失禁
終末
・寝たきり状態

この病気の方は、初期のうちから、毎日決まった時間に決まった行為をすることへのこだわりや、周囲への配慮に欠けた行動が多くみられます。
またそれを制止されると、興奮したり暴力をふるうなどのBPSDが、病初期から目立つこともあります。このため、比較的早期から精神科の専門病院などに入院される患者さんもおられます。
しかし、病気の進行に伴い、すべての患者さんで意欲や活動性の低下が強くなります。
そして初期の頃にみられていた配慮に欠けた行動や興奮、暴力行為などは逆に目立たなくなってきます。
同じ行為の繰り返しについても、複雑な行動は減り、膝をさする、ズボンのしわを指でなぞるというような、単純な行動が残ります。
さらに進行すると言葉を発しなくなり、椅子に座ったまま、またはベッドに寝たままで何もしようとせずに過ごすようになります。運動機能も廃用症候群のために徐々に低下していきます。

この病気にはどのような治療法がありますか?

残念ながら、前頭側頭型認知症を完全に治したり、進行を止める薬はありません。
社会生活上、迷惑となるような行動がみられた場合、生活環境を調整したり、場合によっては短期入院を行うことによって、その行動を別の、より許容できる行動にかえられることがあります。

認知症は治らない?いいえ、治るタイプもあります

認知症の症状があっても、もとの病気を治療すると治ることもあります。
こうした病気を早く見つけて早く治療を始めるためにも、認知症かな?と思ったら、早めに専門医を受診することが大切です。

治るタイプの認知症

・正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)
脳脊髄液(のうせきずいえき)が脳室に過剰にたまり、脳を圧迫します。

・慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)
頭をぶつけたりしたときに頭蓋骨と脳の間に血の固まりができ、それが脳を圧迫します。

その他、 脳腫瘍、甲状腺機能低下症、栄養障害、薬物やアルコールに関連するもの など

認知症予防

認知症予防をうまく生活に取り入れておくと、万一認知症になった後でも、症状の進行がゆるやかになり、生活の質を保つことができます。
いつまでもはつらつとした生活を送るための、認知症予防のポイントをお伝えします。

認知症予防5つのポイント

<1.生活習慣病を予防・治療する>
アルツハイマー型認知症や血管性認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣から引き起こされる病気との関連が強く、それらの予防や治療は、確実に間接的な認知症予防となります。
すでに生活習慣病にかかられている場合は適切な治療を受け、そうでない場合は定期健診を受けるなど、生活習慣病の予防に励みましょう。

<2.運動する>
生活習慣病予防としても運動は大切なのですが、そもそも身体を動かすのも脳が機能しているから。
つまり、運動で脳を刺激することにもなるのです。
また、腰や関節などの運動器に疾患があり痛みや動きの制限があると、生活の幅が狭まり、認知症になった場合、症状が急激に進行してしまうことも多いのです。
運動習慣を身につけ、きちんと栄養を摂って筋肉づくりをするなど、身体のメンテナンスを行ないましょう。

<3.達成感を味わう>
どんなに優れた予防法でも、認知症予防というのは目に見える成果があるとは限りません。
成果が見えないものに漫然と取り組むのはつらいものです。
作品が残る、記録に残すなど、これまでの取り組みが目で見えるような工夫があるとよいでしょう。

<4.他人と交流する>
人間は社会的動物といわれます。他人との交流がなによりも脳を刺激し、生活の豊かさをもたらします。
認知症予防を通してご家族と会話する、同じ取り組みをする仲間と交流する、共同作業を行う、多くの人に成果を発表する機会をもつなどの工夫は大切です。

<5.ご本人が望んで生活に取り入れる>
認知症予防で一番大切なのは、ご本人が無理なく続けられることです。
どれだけ効果がある予防法でも、ご本人が嫌がったり、高価な材料が必要だったりしては、長く続けることは難しくなるでしょう。
パチンコや将棋など、特に認知症予防と銘打っていなくても、ご本人が大好きな趣味があれば、それを続けられる環境を整えることがすなわち認知症予防になります。
ご本人が無理なく取り入れ、楽しみながら継続できる予防法を選びましょう。

認知症の予防が期待できる生活習慣

高齢期はこれまでの生活習慣の集大成ともいえる時期。認知症も例外ではありません。

例えばアルツハイマー型認知症では、発症時にはすでに原因物質とされているβアミロイドが相当蓄積されているといわれています。発症前の生活習慣が、そうした疾患のリスクを上下させると考えられるのです。

また、長く効果的に認知症予防に取り組むという面では、特別なことを行うよりも、認知症予防を意識した生活習慣を取り入れながら日常生活を送る方が長続きしそうですね。

【食生活】

食生活では以下の点に注意しましょう。

<低糖質・低塩分を心がける>   
糖尿病患者ではアルツハイマー型認知症と、脳血管性認知症の、いずれも発症率の上昇が報告されています。同様に高塩分は高血圧による動脈硬化により、脳血管性認知症のリスクを高めます。
これらの原因となる糖質・塩分を控えめにしておくことが、間接的に認知症を予防します。

<いろいろな食べ物・飲み物をバランスよく摂る>
緑茶やワイン、ココナッツオイルなど、特定の食物が認知症の予防によいといわれることがあります。
そうした情報に気を配り、それらの食物を適度に摂ることは望ましいのですが、過剰に摂り続け食生活が偏ってしまうと、その食品による既知や未知のリスクを引き出し、結果として体調に意図しない影響をもたらします。
例えば、緑茶も摂り過ぎればカフェインによる睡眠の質の低下をもたらします。
特定の食品、極端な食事法にこだわるより、多くのものをバランスよく摂取することが大切なのです。

<低たんぱく・低栄養に注意>  
肉や魚などを摂らない低たんぱくや、さまざまな栄養素をバランスよく摂らない低栄養は、認知症を含めた多くの疾患の引き金となります。
たとえ一見1日3食食事をしているように見えても、麺類やパンのみなど主食がほとんどを占めている食生活では、肉や魚などのたんぱく質も、さまざまな栄養素も摂れていないため、実質、低たんぱく、低栄養の状態にあることも少なくありません。

【スポーツ、楽器など体を使う活動】

 
適切な運動は、生活習慣病からの認知症発症のリスクを下げるだけではなく、脳を含めた全身の血行を改善することが期待されます。
スポーツや運動が身についたり、うまくなるようにと考えることは、脳を活性化することにもつながります。
運動ではなくても、楽器の演奏や、編み物などの手芸、料理などの手作業など、体の一部を使う活動を通して、脳を活性化できる生活習慣も効果的です。

【いつもの行動に頭を使う工夫を】

 
知的作業と運動を組み合わせる活動も認知症予防の効果が期待されています。
例えば、ただ散歩をするだけでなく、目にする植物の名前を思い出しながら歩いたり、知らない街を地図やガイドブックを参照に歩いてみたり、俳句や短歌を作りながら歩くなどもよいでしょう。

【人とのコミュニケーション】

 
以上のような生活習慣も、人とかかわり、コミュニケーションしながら行えば、さらに脳の活性化が期待されます。
親子で地図を頼りに散歩するなども効果的です。脳の健康を保つ生活習慣を、ぜひ仲間やご家族と一緒に取り入れてください。

認知症の決定的な予防法は見つかっていない

【認知症予防の研究はどこまで進んでいるのか】

現在、さまざまなアプローチで認知症予防の研究が進められています。
「効果が期待される」と言われる方法もあるようですが、決定的な予防方法は、実はみつかっていません
多くの認知症予防の研究は、特定の生活習慣や食品を生活に取り入れているグループと、そうでないグループを一定期間追跡調査し、認知症の発症率を統計的に比較する方法をとっています。
しかし、認知症の発症には、その生活要素以外にも多くの要因が絡むため、簡単には結論が出せないことが多いようです。
効果があると謳われている予防やトレーニング法も、研究対象とした人数が少ない、調査期間が短いなど研究に課題の多い場合もあり、万全な成果を出しているとは言い切れないようです。
ただし、現時点で科学的に完全に実証されていない方法が、全く効果がないと明らかになったわけでもないのです。1つの予防法の効果が証明されるまでには長い期間が必要です。
ご本人が楽しく取り組めるものなら積極的に試し、ご本人の取り組み方のポイントをつかみ、生活に活かすことが実用的で賢い考え方かもしれません。

みんなで取り組みたい認知症予防

【遠く離れた両親にしてあげたい認知症予防】

遠く離れたご両親は、どんなものがお好きで、どのような人々とつきあっていらっしゃるでしょうか?
まずは、ご両親に興味をもち、情報を少しずつ集めてみましょう。
いま夢中になっておられるもの、昔やりたかったけどあきらめた活動、よくわからないけど試してみたい新しい趣味や場所はなんでしょうか?
そこに認知症予防のヒントがあると思います。それらのことを、なじみの地域で、なじみの顔ぶれで、いつまでも続けられるように手助けすることこそ、素敵な認知症予防だと思います。

【認知症予防はいつ始めてもOK】

認知症は高齢のある時点から突然始まるのではなく、50代後半くらいから少しずつ始まると言われています。
また、認知症の人と、そうでない人との境界線はとてもあいまいなものです。
認知症の軽度の時期は、目立った症状もなく、画像診断など医学的診断法でもそう簡単には認知症を発見できません。
認知症一歩手前の状態といわれる軽度認知障害(MCI)の人も増えていますが、生活に支障なく過ごされている方もたくさんいます。この意味で、認知症予防は全ての人のためのものであり、若い方も、認知症ではない方も認知症予防に興味をもつのは、至極妥当なことなのです。

【認知症への恐怖を取り去ることも「予防」のひとつ】

認知症予防に取り組まれる動機のひとつとして「認知症は恐ろしいものだ」「認知症になったら終わりだ」という思いがあるかもしれませんが、それは決して正しくありません
認知症になってもならなくても、ご本人はご本人らしく、ご家族はご家族らしく、それぞれの生活を豊かに送ることができます。その手段やきっかけとして、認知症予防とされる活動や工夫を活用してもらいたいのです。

【ささやかな日常生活こそが認知症予防】

認知症予防は、特別なことではありません。
これまでに挙げた、食生活の改善や運動習慣、趣味活動などを無理のない範囲で取り入れ、ちょっとしたさまざまな工夫を、長い時間続けることで、ようやく効果が期待される、そんな地道な取り組みなのです。

【これまでの生活の集積こそ「認知症」を退ける】

また、認知症の人が苦しまれることに、ご自身に払われていた敬意や愛情、人とのつながりが認知症を理由にして失われていくことがあります。
これまで出かけていた素敵な場所、行えていた趣味活動が失われていくこともさぞや苦しかろうと思います。
ご本人が生きてこられた長い歴史の間で楽しまれたもの、愛してきた人々、ご近所付き合いや地域での暮らし、そんな特別ではないものが、脳や心を活性化するエネルギーを生み出します。
そのエネルギーが認知症を退け、認知症となっても豊かな生活を支える源となると考えます。
認知症予防は単に認知症にならないようにするという、後ろ向きのものではないと思っています。
認知症になってもならなくても、生活をより健康的に、より充実して送るための認知症予防に、ぜひ取り組んでくださればと思います。

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