皆さんが駅や街の中を歩いていると、
白い杖をつきながら歩かれている方や、盲導犬を連れた方を目にすることがあるでしょう。
視覚障がい者は道路交通法第十四条にて、
『目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ)は、
道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、
又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。』
と定められています。
車両の運転者は視覚障がい者に対して特に安全を配慮する義務を持ち、その対象であることが分かるように白杖の携行や盲導犬を連れて移動することを義務付けているわけです。
そして、このような場面に遭遇した経験はございませんか?
「あれ?あの方、道に迷っているのかな?」
「改札の場所はわかるかな?大丈夫かな?」
など何かお困りの様子なのはわかるけど、声をかけて良いのかわからない、
または手助けしたいけどどのように接していいのかわからない…。
今回の記事は、皆さんに『視覚障がい』について、
少しでも理解を深めるきっかけとなれたらと思います。
視覚障がい者とは
眼に何らかの理由で障がい者が「視覚障がい者」です。
視覚の障がいがあるというと「目が全く見えない」と考える方がいると思いますが、実際には見え方に困難を抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。
要するに「見えにくい」という方々のことです。
「見えにくい」とは?
見えにくさにもいろいろな特徴があります。
そのため、それぞれの見えにくさに合った支援が必要になります。
まずは正常な見え方です。
この写真を例にとって様々な「見えにくさ」をご紹介します。
白く濁った見え方
「濁った」という表現の通り視野全体がぼやけて見えます。
明るさは認識できますが、ものの形や文字はよくわかりません。
白内障など、目のレンズにあたる部分が濁ってしまうことで起こります。
暗く感じる見え方
視野全体が暗く見えます。
点字ブロックの黄色はかなりはっきり見えますが、
周りの様子はうす暗くわかりにくくなっています。
まぶしさを感じる見え方
光が強く感じられ、さらに壁や床が白いことで光を反射しまぶしく見えます。
白地に書かれた文字や案内記号などはよく見えません。
中心がゆがむ見え方
視野の中心に見えにくい部分があり(赤い丸で囲った部分)、
ものの形をとらえることが難しいです。
足元や周囲の様子は認識できますが、正面から来る人やものに気が付かなかったり、会話する際に相手の顔が見えません。
視野の一部が欠けた見え方
この写真の場合は右側が見えにくい場合です。
右側にある障害物や、通路が右側にあることが認識できないため、出てくる人に気づくことが困難です。
視野の中心だけの見え方
視野の中心だけが見えていますが、周囲の様子は全く認識できません。
常時、筒を覗いたように見えているそうです。
このように同じ「見えにくい」といっても見え方は様々です。
視覚障がい者を支える用具
○白杖(はくじょう)
つい最近までTVドラマでも取り上げられていた白杖。
ご覧になった方はご存じかもしれませんが、全盲(全く見えない)の方だけでなく、見えにくい方も持っている道具です。
白杖は形状や長さなどの違いで100種類以上あると言われており、その中から合ったものを選びます。多くの場合は、基本的な使用ルールとともに歩行訓練士さんから指導や助言を受けながら選びます。
※代表的な3種類
・シンボルケーン
主に周囲の人に自分が視覚障がい者であることを知らせるために使う白杖です。
弱視や全盲の方に比べ、歩行に支障がない方が使用する白杖として知られています。
形式はやや短く細い形をしています。
・ロングケーン
歩行の際に一歩先の障害物を把握するための白杖です。
この白杖には、直杖と折り畳み式があり、形状も長く、1歩先の障害物の感知や歩行時の周囲の確認に向いています。
・サポートケーン
別名:身体支持杖とも呼ばれ身体を支えるための白杖です。
特徴は頑丈で柔軟性のある材質で作られており、グリップが柄になっています。
主に足腰の弱い方や高齢者が使う白杖です。
○盲導犬
盲導犬は、人との強い信頼関係を持つように特別な訓練に合格した犬です。
飼い主の指示に忠実に行動するように訓練されています。
ハーネスを付けているときは盲導犬として「仕事」しているときなので、声をかけたり、じっと前から見たり、口笛をならしたりしない。
・食べ物を見せたり、あげたりしない。
・盲導犬をなでたり、ハーネスを触ったりしない。
・自分のペットと挨拶させようと近づけたりしない。
以上を必ず守って、そっと温かく見守ってください。
盲導犬が集中力を欠くと、安全に歩けなくなってしまいます。
困っている視覚障がい者を見かけたら・・・
目の不自由な方(全盲の方も弱視の方も)は、
困っていても周りに手助けをしてもらえる人がいるか気づきません。
そんな時は、「どうしましたか?」「お手伝いできることはありますか?」と
声をかけてください。
歩きやすい街の為に
たくさんの人が行き交う町には、視覚障がい者にとって役立ついろいろな工夫や仕組みがあります。
○点字ブロック
道に敷かれた点字ブロックは目の不自由な方にとってもっとも大切な道しるべとなります。
点字ブロックには2種類あり、丸い粒上の点が並んでいるものを「警告ブロック」、
細い線のような突起が平行に並んでいるものを「誘導ブロック」といいます。
「警告ブロック」は道の分かれるところや段差などの手前にあり、ここから先の道の様子が変化していることを示しています。
「誘導ブロック」は線の方向に道が続いていることを表しています。
※上記のように点字ブロックは視覚障がい者が歩く上で欠かすことのできないものです。
そのため、点字ブロック上やその近くに歩行の障害となるものの放置(自転車等を止めるなど)はしないようにしてください。
○音声信号
交差点で信号機から流れている音を聞いたことがあると思いますが、音声信号の音は信号が青であるということを知らせるだけでなく、音の方向で道路をまっすぐ渡ることができるようになっています。
また、青信号の向きによって違ったメロディが流れ、視覚障がい者の方にどちら側の信号が青であるかを伝えています。
○手すりの点字表示
駅や公共施設等の手すりに点字の表示がついていることがあります。
例えば駅では「何番線か」「どこ行きの電車が来るホームか」など大切な情報が書かれています。
最後に
今回は「視覚障がい者」に焦点を絞って様々な情報をまとめてみました。
街を歩いていて「この黄色いブロックはこういう意味があったのか」、
「目が見えないといっても色々な種類があるんだ」など、視覚障がいについて
少しでも理解を深めていただけたら幸いです。
記事の内容を実践することも大切ですが、
まずはどんな人でも安心・安全な生活が送れるように、
みなさんで「一緒に歩こう」という気持ちが大切ですね。
※参照※
・社会福祉法人 日本点字図書館
https://www.nittento.or.jp/news/koekake.html
・川崎市視覚障害者情報文化センター
http://www.kawasaki-icc.jp/guide/index.html
・日本歩行訓練士会
https://nippokai.jp/wp/formembers/canes/
・「視覚障害者のホント 暮らしの工夫とサポート」
http://isee-movement.org/real/life#anchor4